ブックレビュー①
ということで、これからなにか興味深い本を読んだら、
その感想と意見を備忘録的に書いていきたいと思います。
では、最初のレビューは、大谷昭宏著『監視カメラは何を見ているのか』です。
(2006年、角川oneテーマ21)
大谷さんはテレ朝の朝の番組によく出ている方です。
この本のタイトルには「監視カメラ」というワードが入っていますが、
それについて主に触れているのは後半です。
では、前半は何について述べているのか。
共謀罪です。
これはまだ日本では成立していない法律で、
大まかにいえば、「悪いことを考えている奴は、捕まえろ!」といったものです。
危険な思想などを持っている人を未然に捕まえられる法律だ、と単純に解釈するのは危険だと本には書かれています。
つまり、法律は拡大解釈されるのが常で、権力に都合のいい解釈がされやすいんです。
そう考えると、「危険な思想」というものを判断する基準を持つのは権力であり、
それを使えばいとも簡単に僕らは捕まります。
「お前、今、国にとって不利なことを知り合いと考えただろ!」ってな具合に。
共謀罪はたとえば国にとって不利なことを話し合えば即アウトです。
なにかを実行しなくても。
(ちなみに対象は政治団体だけでなく、市民団体も対象)
犯罪を防止できると言えば聞こえはいいですが、
僕らに対するリスクとリターンのバランスが取れていないような気がして、
やはり賛成することはできない…と僕は感じました。
もっと嫌なのは、普段の会話から共謀罪は成立するので、
誰かに聞かれたらやばい…と考えて、
ちょっとした文句も言えなくなるということです。
そんなのは絶対に嫌ですよね。
監視をしあう社会は共謀罪の手にかかればすぐに出来上がります。
その点からも賛成できない。
大谷さんも基本的には反対の立場のようです。
*共謀罪は今のところ可決・成立されてませんが、本書内で「ゾンビのようによみがえる」と表現されているように、何回も国会に提出されています。
では、後半。 監視カメラを象徴として、監視し合う僕らの社会のカラクリが具体例と共に示されています。
読めばわかりますが、監視カメラがあれば安全だという前提を読者はいきなり崩されます。
具体的に03年に長崎で発生した男児の誘拐殺人事件や05年7月ロンドンで起きたテロを、
監視カメラがありながら、事件を防ぐことができなかった例として提示しています。
カメラに決定的な防犯能力がないのならば、僕らはただコンビニで買い物し、
本屋さんで立ち読みしているところを誰かにずっと見られ、その様子をどこかにストックされているだけだということになります。これって嫌じゃないですか?
カメラに全く防犯能力がないとは言いませんが、
疑わしいその能力を疑わずに、カメラの存在を気にしていないこの国の人々が
不感症なのではないかと思えて仕方がありません。
しかも、一方でプライバシーを守れ!と叫びながら、
私生活をバンバン見ている監視カメラに対して無批判だというのも
よく考えるとおかしいですよね。
誤解されたくないので付け加えておきますが、
僕は「監視カメラなんかなくしちまえ!」というつもりはなく、
とりあえず、こんなにカメラがあふれているのに、
プライバシーを覗かれ、その記録は誰が持っているのかも分らないという今の状況に、
もうちょっと恐怖や疑問をもったほうがいいんじゃないかと思うだけです。
本書では、他にも監視社会におけるマスコミや
超監視社会がどんな世界であるかにも記述があるので、
是非読んでみてください。
ただ、タイトルの「監視カメラは何を見ているのか」は本を読んでも分りません。
つまり、これは著者から読者へのメッセージで、
「この本を、それについて考えるきっかけにしなさい」という意味だと
僕は解釈しました。
以前も監視カメラについてのことはブログに書いているので、
興味がある方はぜひ読んでみてください。